絹谷幸二天空美術館にて2022年12月16日~2023年7月2日に開催の特別展「不二法門」の観覧記録です。
どんな展示?
・絹谷作品に息づく「不二(※)」の思想をテーマに展示
(※)維摩経というお経に出てくる「相対する概念も根底では一つ」という考え
・コロナ禍が作品に反映されている
・『黒谷光明寺 降臨 文殊菩薩』がすばらしい
観覧レポート
黒谷光明寺 降臨 文殊菩薩
本展覧会の目玉はやはりこちら。
この『黒谷光明寺 降臨 文殊菩薩』は、「たった一人山奥にこもって解脱するんじゃなくて、俗世で解脱するのが仏道(※本記事執筆者が意訳)」と維摩さん(※)に諭された文殊菩薩が、山から下りてくるシーンを描いています。
(※)維摩さんは『維摩経』というお経に登場するインド商人。
商人でありながら仏教にとても詳しく、知恵の象徴の文殊菩薩と問答できるほどのキレ者です。
文殊菩薩は、京都の黒谷光明寺のお像がモデルということで、仏像っぽさもあるのですが、生きている感もありますよね。
そして文殊菩薩を乗せて一生懸命移動している感じの獅子がかわいい。
パンフレットの写真だと伝わりにくいのですが、実物では金・銀の塗料(箔?)もよく光り、迫力がありました。
『天空仁王・喝Ⅰ』『天空仁王・喝Ⅱ』
仏教の守護神である仁王さまが、コロナと対峙する様子が描かれています。
吽形の手元を見ると「Corona」を打ち砕き、さらに人々を救うための糸を垂らしています。
助かった命と助からなかった命がある、ということを表現(生きること死ぬことは別々のものではないという不二の思想)。
世相を作品に反映させられる機動力の高さも素晴らしいなと感じました。
こういうリアルタイムな変遷を見ることができるのは、同じ時を生きる作家の魅力でもありますね。
参考 常設展示もよい
絹谷ワールドに没入できる3D映像や天空ギャラリーからの景色も素敵です。
詳しくは<<<【大阪】絹谷幸二 天空美術館(梅田スカイビル27階)- ボリュームちょうどよく満足感もある - 仏像、ときどきワンダー観光(※メインブログに飛びます)
shishi-report-2.hatenablog.com
おわりに
「フレスコ画×仏教モチーフ×現在の空気」という組み合わせが非常に魅力的な絹谷作品。
2023年現在、御年80歳ですが、バリバリに作品を生み出されていて憧れます。
年齢を言い訳にしがちですが、何事も諦めすぎず、適切に力を発揮できたら素敵だなあ、と思いました。