東京国立博物館にて開催(2018年10月2日~12月9日)の「マルセル・デュシャンと日本美術」展の観賞記録です。
デュシャンって?
フランス生まれの美術家。
画家として出発したようですが、絵は早々に放棄。
その後は「レディ・メイド」と呼ばれる、工業製品を用いたアートを発表するようになりました。
この「レディ・メイド」こそ、デュシャンの代名詞といった感じですかね。
さらにその後はチェスのプレイヤーとして生き、芸術は行っていないように見えましたが、「ローズ・セラヴィ」名義で作品を制作していたりもしたようです。
- 作者: マルセルデュシャン,ピエールカバンヌ,Marcel Duchamp,Pierre Cabanne,岩佐鉄男,小林康夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/05/01
- メディア: 文庫
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印象に残った作品
油絵
デュシャンが早々に放棄してしまった絵画。
キュビズム、というのでしょうか、素人にはなかなか解釈の難しい絵でした。
解釈は難しいのだけど、どこか魅かれるところのある絵でした。
たとえば『花嫁』。
(撮影禁止マークがあるもの以外は撮影OKでした。SNSやブログに掲載NGとは書かれていなかったので貼りましたが、問題あれば削除します)
絵のタイトルは『花嫁』。
これのどこが花嫁なんだ…としばし考え込みました。
説明パネルによると、「人体の臓器を繊細な色調で描くという、空想的で不自然な演出が施されている」とのこと。
臓器なのですね!
言われてみれば、そう見えなくもない。
素人には理解するのが難しいですが、不思議さに心ひかれるような、そんな魅力を感じました。
大ガラス
デュシャンの代表作の一つですね。
説明パネルによれば、上部の機械と昆虫の混成物が花嫁を、下の9つの雄の鋳型が独身者を示しているのだそうです。
下部は三次元空間ですが、上部は四次元空間を描いているのだとか。
む、難しい。
レディ・メイド
自転車の車輪
展示室に入ってすぐ視界に入ったのがこちら。
あえて言語化すると、自転車の車輪に二股のフォークをつけて、椅子の上に設置した作品、です。
車輪にすぎない、といえばすぎないのかもしれませんが、なんとなくおしゃれです。
泉
これが一番有名でしょうか。
小便器に「R.MUTT」と署名し、『泉』というタイトルをつけた作品。
なお、日本語訳の「泉」は誤訳で、「噴水」と訳すべきだったという意見もあるんだとか(wikipediaより)。
オリジナル作品は紛失しており、現存するのはレプリカなのだそう。
この作品のどこがすごいか、というと、美術という概念の枠を外そうとしたところ。
芸術家が提示したものが芸術なのではなくて、作品が何であっても「みるものが芸術をつくる」ということを表現したかったようです。
作品の背景を知ると、観る目も変わってきますね。
秘めた音で
なんだか粋だなぁ、と思ったのが『秘めた音で』という作品。
パッと見、麻紐が板に挟まれているだけのものに見えますが、音が鳴るそうです。
本作品は、デュシャンがフランス語と英語を混ぜた意味をなさない文章を彫った2枚の真鍮板の間に、梱包用の麻紐の球を挟んだもので、デュシャンは、何かわからないよう麻紐の中心に物体を入れて欲しいとアレンズバーグに頼んだのである。この作品は振ると、玩具のガラガラのように、タイトルにあるとおり「秘めた音」を生ずる。
説明パネルより引用
デュシャン自身も何かわからないものの音がするって、しかもその作品のタイトルが『秘めた音』って、おしゃれだなぁ、と思ったのでした。
どんな音がするのか、聞いてみたいものです。
遺作
晩年、ひっそりとデュシャンが作成していた遺作。
これまたインパクトの強いものでした。
(実物はないのですが、映像で観ることができました)
のぞき穴の開けられたドア。
そこから内部を覗くと、なにやら女性のマネキンが横たわっている。
背景には滝が流れていたり…。
なんかもう、なんじゃこりゃ、という感じなのですけど、その秘められた感じとか、不思議さに心惹かれました。
フィラデルフィア美術館では、実物を観られる(覗ける)らしいです。
今回の展覧会では、この『遺作』を説明した映像が、一番印象に残りました。
おわりに
今回の展示では、デュシャンと日本美術の共通点を考える、日本美術の新しい楽しみ方を考える、という狙いがあり、第2部(展示の終盤)で、展開されていました。
あくまで素人の感想ですが、視点は良いけれどちょっとこじつけ感があるかなぁ、と思いました。
まぁ、それは参考程度に考えるとして、デュシャンの作品たちは個性的でおもしろかったです。